おわりに
今振り返ってみると、僕は迷ったときにはなるべくチャレンジングな選択肢を選ぶようにしてきたと思います。ファミコンを作ろうと思ったときも、アメリカに転職を決めたときも、ナイアンティックに転職したときもです。チャレンジをしない方が楽だし、同じことを続けていけば、それなりに成果も出ると思います。でも僕は新しいこと、面白いことを生む可能性があることには積極的に挑戦したいといつも思っています。それはそもそもチャレンジできるということ自体が恵まれていると思うからです。世の中には、本当に今日の食べ物にも困っている人が大勢います。職業選択の自由がある人はほんの一握りだし、新しいことに挑戦できる人は、ほんのわずかだと思います。チャレンジしないことは悪いことではないですが、すごくもったいないことだと思います。もちろん、新しいことを始めると失敗するかもしれませんし、成功しても思ったほどの成果は得られないかもしれません。それでも経験は必ず自分を強くします。
中国の寒村で生まれた僕は、もし日本に行けなかったとしたら今頃どんなことをしていたのでしょうか。きっと出稼ぎをしていたか、畑を耕していたでしょう。ソフトウェアエンジニアにはならなかったでしょうし、『ポケモンGO』を作ることもなかったと思います。幸運にも僕は日本に移住することができました。そのおかげで『ポケモン』と出会い、コンピュータと出会いました。もしこれを読んでいるあなたが日本に住んでいるとしたら、新しいことに挑戦できる環境にいるとしたら、それはこのうえない幸運なことなのです。恐れず挑戦してください!
本書を執筆するにあたっては、多くの方にお世話になりました。株式会社小学館集英社プロダクションの都築社長には自伝を執筆する機会を頂きました。ナイアンティックのけんとさん、まゆこさん、株式会社ポケモンの福嶋さん、諸月さんには本の内容の確認や素材提供にご協力頂きました。表紙の作成にはまこさん、まどかさん、尚さんにご協力頂きました。本文の執筆、構成に当たっては岡安さんのお世話になりました。担当編集者の関谷さんと木川さんには特に難しい調整で苦労をおかけしました。また、『ポケモンGO』の開発においてはいつも大勢の方にご尽力頂いております。株式会社ポケモンの石原さん、宇都宮さん、江上さん、曽和さん、小川さんをはじめポケモンGO推進室の皆様、株式会社ゲームフリークの増田さん、ナイアンティックのジョン、マイク、ケロさん、マサさん、エド、デニスを始め開発チームのメンバー、株式会社クリーチャーズの穴澤さん、氏家さん、植松さんをはじめスタジオの皆様、任天堂株式会社の皆様、またいつも『ポケモンGO』で遊んで頂いているファンの皆様すべてに、この場を借りて厚く御礼申し上げます。
野村 達雄
2017年6月4日